2010年4月8日木曜日

ステージ

「ステージは聴衆の皆さんとプレーヤーの間に出来上がるエネルギーでつくられる」というような言葉をある奏者の著書で読んだ事があります。「そうだろうなあ」と頷きながらも、そこから生まれてくる何かをステージ上で実感したり、味わったりというところまで行き着いたという感触がまだ今ひとつの私でした。しかし、この2週間の体験でいろいろ学んだように思います。
先週末はは大先輩方との共演でした。コンサートの前半を終えて休憩に皆でお茶を飲んでいるとき、「今日はお客様が緊張した感じがしませんか?私が疲れているのかしら?」と尋ねてみるとどうやら皆さん同じようなことを感じていたよう。今日はトークなしだよ、といっていたリーダーが急遽後半の始まりにマイクをもって舞台へ出て行きました。「今日のお客様はどうやら緊張しているね、とメンバーが言っております」とトークが始まりました。いや〜、随分とそのまま言ってくれるもんだな〜、メンバー全員ステージ裏で話の展開に冷や汗をかきつつ聞いておりましたが、そのトークの後、舞台へ入って行ったとき、もうホール全体の空気が既に少し変化していたのを感じました。作品についても上手にふれながらも、いたって自然できわめて個人的!?なお話でありましたが、それが絶妙に雰囲気をつくってくれたんだなあと感心したものです。私はお話はできれば避けたい、皆さん音楽を聴きにきてくださっているのだから、と思ってきた人間ですが、快適に音楽をたのしんでいただくために大事なことだと実感する舞台でした。聴衆の皆さんと奏者が心を近づけることで、私たち奏者も舞台上での演奏を存分に楽しめ、そしてそれを感じていただける。これが演奏会のおいしいところでしょうか。

アニマコンコルディアの公演の前日、AC(アニマコンコルディアの略)でチェンバロをつとめてくれている西山まりえさんのリサイタルを聴きにいきました。彼女が実にありのままに自分の話をしている、そしてそれを楽しくきかせてもらっている自分自身をみて少々びっくりしたほどです。私は、これまで自分の話をコンサートでしたことはありませんでした。しかし、作品の話をするにしても、自分の話がはたして演奏を楽しんでいただくことにつなげられているのだろうか?という疑問もありました。というわけで、第1演習、アニマ コンコルディアのステージでは私も思い切って、できるだけフツーにトークをしてみることにしました。しかし、これがなかなか、ステージで素のまま話す、というのが難しいものなのです。ついかたくなってしまいます。でも、考えてみれば、ありのままに演奏すべき人間が、舞台上で自分を開けないというのではおかしいものです。「舞台でバカができるようでなければ・・」 バカというのは喜劇役者を演ずることができる、という意味合いですが、そう私の師匠が話していたことを今再び心に受け留めています。
聴衆の側にたった演奏会、演奏の側で見がちになってしまっている私がもう一度スタート地点に立つべきときのようです。