2010年4月8日木曜日

ブラジルと日本をつなげたら・・・?


今日は日本在住のブラジル人日系の子供たちと音楽してきました。
パウルも私も二国で外国生活を経験(パウルはいまだ続いているわけで)、母国から遠く離れて家族を養い生活する苦労がよくわかります。
また両親について来日した子供たちには、私たちの計り知れない思いや状況を抱えているようです。
16歳のとき来日した青年が、「そんな子供たちを音楽が支えてくれるように」と、毎週末ギター、コーラスなどを教え、バンドでの演奏活動で子供たちを活気づけています。これまでにいろいろなイベントで演奏に参加してきました。
 
楽譜はとりあえずなし。曲は知っているのであとは口づてに教えていきます。子供たちは聞いたものをあっというまに覚えていきます。只今マイケル ジャクソン、ブラックアイピーズなどを練習中。





写真の中心の彼がこのグループの発足人、ロックギタリストです。「音楽はいつも僕らを支えてくれる」「音楽なら万国共通」が口癖。(ほんとに会うたびに言ってます・・。とってもピュアな人です)






これがブラジル人の中だけでなく、この日本に住む子供たちのためのグループにしたいというのが彼のゴールです。地球の裏側から来た彼らはなんとも人懐っこくてユーモアいっぱい、チャーミングな子供たちです。是非、音楽を通して日本の子供たちとの交流へと広がっていってほしい、と私たちも願っています。

機内への楽器持ち込み





今回の公演のため名古屋ー福岡間は飛行機で移動。今日は国内線について新しい情報をお知らせします。








ちょうど半年前、連休中の福岡からの帰路で私たちは楽器持ち込みを断られたために、急遽別の航空会社に変更という大事件に見舞われました。既に多くのミュージシャンからブーイングがでている、と関係者の方がおっしゃっていましたが、私たちも過去にこういう体験がなかったために、現地での新しい対応に、正直かなりキレておりました・・・。
旅行後、すぐ航空会社に陳述書ごときものをしたため、対策をねっていただくようお願いしました。まさか私たちの手紙だけが功を奏したわけではないでしょうが、国内線は全ての航空会社で楽器持ち込みの規制がなされた今回、それなりの対策を用意してくれていました。

まずヴァイオリンについては航空会社の用意してくれたケースに楽器を移し、自分のケースは預けるという条件でヴァイオリンに限っては機内持ち込みが可能になりました。あちらが用意したケースのサイズはというと、いわゆるひょうたん型のケースと変わらないものだったのですが、それではひょうたん型のものであれば自分のケースでも構わないのかというと、どうもそうではないらしい・・。どうしてなのか、その辺はよくわかりませんが、何しろ航空会社にとっても新しいことなので、今ひとつ説明が明確ではない、というのが現状だと感じました。





「機内持ち込み可能なケースのサイズは?」という質問に対しては「115センチ以内なら最長が55センチを超えてもOK」ということでした。既にケースの生産と販売が始まり、楽器屋さんでもちらほらみられるようになりましたが、ヴァイオリン本体だけが入るソフトケースとハードケースを先日みつけました。
弓は弓ケースに入れて別に運ぶことになります。ただ、楽器屋さんの話では、弓は結局長過ぎということで、預けることになるそうなんですが、空港で航空会社の方に聞いた段階では、そういう説明はなかったので、リュックなどにいれてひょっとして可能なのかなー?とかすかな希望を抱いたり。でも、事前に直接問い合わせて、確認を取ってみて下さいね。万が一のために、楽器用の席を確保しておく必要もあるので、用意周到、航空会社にその旨を伝えておくと良いと思います。機中、いつもなら並びでとってくれるはずのわたしたちの席が前後に離れ、ほぼ満席かなと思われる機内に、なぜか私たち二人の隣だけ空席があって、「???」と思っていたのですが、実はケースが確保できずに楽器用の席を購入する場合に備えて確保されていたようです。すばらしい・・・。

航空会社のヴァイオリンケースの用意のほうは、名古屋の場合はその日5個のみでした。たくさん必要な場合は事前に言っておけば、他の空港から借りてくることもあるそうですが、自分用に取り置きすることはできず、チェックインをする際に在庫があればそれを借りることができ、なければその場で1席楽器用にチケットを購入する、ということになります。ちなみに楽器用の1席は10,000円ほどです。

さて、こうしてヴァイオリン奏者はかろうじて難を免れることができたのですが、今回の公演で一緒だったヴィオラ奏者は、楽器を預けるはめに。預ける場合の箱というのは遠目にしか見ることが出来ませんでしたが、ちょっと厚めの段ボールかい?っという感じの箱でした。
飛行機をおりてすぐ楽器の点検をして、その場では特別損傷もないようにおもわれたヴィオラ。リハーサルを始めたとき、駒が大きく右にずれてしまっていたとか・・・。おおー、こわい。やっぱり荷物をいれるときにかなり衝撃があるんですね〜。まだまだ、私たちの立場から、アイデアを練っていろいろな提案をしていく必要があるようです。

ショパンからモンテヴェルディ!?どちらも熱〜い!!


この3月はほんの半月の間に400年前からぐぐぐっと200年の月日を駆け巡ってきました。
上旬は仲道郁代さんの独奏でショパンのピアノコンチェルトの伴奏をさせていただいていました(8月に録音予定)。フレデリックの、デリケートでありながら鍵盤から溢れ出る「熱〜い吐露」、私のピアノへの羨望はこれなのです。これをヴァイオリンで弾けないのがなんとも悔しい・・・。しかし!!今回オーケストラパートを弾きながら、彼の描き出してくれた弦楽器の音がまるでパーフュームのように香しいのを実感しました!




(3月7日:クラシカルプレイヤーズ東京/これはショパン協奏曲の前座で演奏したヴィヴァルディ四季の春。ヴィヴァルディ、ショパン、ベートーベン交響曲と、このコンサート自体、かなり時代を疾走しました・・・)


そんなわけで、アニマ・コンコルディアはすっかりショパン憑いておりましたが、その2週間後、そこから一気に飛んで今度はモンテヴェルディ。
ショパンは1810年生まれ、今回演奏したモンテヴェルディの「聖母マリアの夕べの祈り」の出版は1610年、つまりは200年遡ったわけ・・。さすがにリハーサルの初めでは・・自転車で坂道を上がる・・・?みたいな感じで耳に向かい風を感じておりましたが、あっというまにモンテヴェルディの魅力に引き込まれてしまいました。個性も時代も全く違うけど、どちらも熱い〜!!いろんな時代にタイムスリップしながらそれぞれのロマンを味わう事の出来る私たち現代人は幸せです〜!!






ステージ

「ステージは聴衆の皆さんとプレーヤーの間に出来上がるエネルギーでつくられる」というような言葉をある奏者の著書で読んだ事があります。「そうだろうなあ」と頷きながらも、そこから生まれてくる何かをステージ上で実感したり、味わったりというところまで行き着いたという感触がまだ今ひとつの私でした。しかし、この2週間の体験でいろいろ学んだように思います。
先週末はは大先輩方との共演でした。コンサートの前半を終えて休憩に皆でお茶を飲んでいるとき、「今日はお客様が緊張した感じがしませんか?私が疲れているのかしら?」と尋ねてみるとどうやら皆さん同じようなことを感じていたよう。今日はトークなしだよ、といっていたリーダーが急遽後半の始まりにマイクをもって舞台へ出て行きました。「今日のお客様はどうやら緊張しているね、とメンバーが言っております」とトークが始まりました。いや〜、随分とそのまま言ってくれるもんだな〜、メンバー全員ステージ裏で話の展開に冷や汗をかきつつ聞いておりましたが、そのトークの後、舞台へ入って行ったとき、もうホール全体の空気が既に少し変化していたのを感じました。作品についても上手にふれながらも、いたって自然できわめて個人的!?なお話でありましたが、それが絶妙に雰囲気をつくってくれたんだなあと感心したものです。私はお話はできれば避けたい、皆さん音楽を聴きにきてくださっているのだから、と思ってきた人間ですが、快適に音楽をたのしんでいただくために大事なことだと実感する舞台でした。聴衆の皆さんと奏者が心を近づけることで、私たち奏者も舞台上での演奏を存分に楽しめ、そしてそれを感じていただける。これが演奏会のおいしいところでしょうか。

アニマコンコルディアの公演の前日、AC(アニマコンコルディアの略)でチェンバロをつとめてくれている西山まりえさんのリサイタルを聴きにいきました。彼女が実にありのままに自分の話をしている、そしてそれを楽しくきかせてもらっている自分自身をみて少々びっくりしたほどです。私は、これまで自分の話をコンサートでしたことはありませんでした。しかし、作品の話をするにしても、自分の話がはたして演奏を楽しんでいただくことにつなげられているのだろうか?という疑問もありました。というわけで、第1演習、アニマ コンコルディアのステージでは私も思い切って、できるだけフツーにトークをしてみることにしました。しかし、これがなかなか、ステージで素のまま話す、というのが難しいものなのです。ついかたくなってしまいます。でも、考えてみれば、ありのままに演奏すべき人間が、舞台上で自分を開けないというのではおかしいものです。「舞台でバカができるようでなければ・・」 バカというのは喜劇役者を演ずることができる、という意味合いですが、そう私の師匠が話していたことを今再び心に受け留めています。
聴衆の側にたった演奏会、演奏の側で見がちになってしまっている私がもう一度スタート地点に立つべきときのようです。

バロックアンサンブル「アニマ コンコルディア」東京公演

今日は私のアンサンブルグループのご紹介をします。グループは2001年にヴァイオリン奏者パウル エレラと私で結成しました。私たちはバロックヴァイオリンを使って演奏しています。バロックヴァイオリンとは何かというと、バッハやヘンデルなどが生きていた時代、今ではバロック時代と呼ばれますが、ヴァイオリンをその当時に使用されていた楽器の状態にもどしています。例えば、弓も、バロック時代とメンデルスゾーンなどロマン派の時代を比べると形が全く違います。弦もガット弦を使います。他にも時代によって変化していったところがたくさんあります。したがって、当然奏法や音色も違い、初めて聴かれる方にとっては、ヴァイオリンというイメージがひょっとすると180度変わるかもしれません。とにかくまずは美しいガット弦の音色を味わっていただきたいと思います。

バロック時代の音楽はまさに音の対話と調和の世界です。私たち二人のヴァイオリン奏者がこうして巡り会ったことで、その音の対話と調和を表現できることはとても幸運だと思っています。実はヴァイオリンの黄金時代である17,18世紀にはヴァイオリンの魅力、そして音楽の対話を堪能できる作品があふれんばかりにあり、私たちもヴァイオリン1本のためのソナタだけでなく、2本でのトリオソナタをたくさんとりあげながら、活動してきました。その後チェンバロ/ハ−プ奏者として活躍している西山まりえとの巡り会いをきっかけに創意がさらに深まり、2008年、グループ名を「アニマ(魂) コンコルディア(連合、調和)」と改めました。今、この3人の調和により、音楽への新しいアプローチと創作が始まりました。
5月17日、のりにのったこのグループのライブを楽しんでいただけます。是非いらしてください!詳細はホームページへ http://www.animaconcordia.com

アニマ コンコルディア コンサート
”共鳴する呼吸と心情”

出演:パウル エレラ、戸田 薫(ヴァイオリン)、西山まりえ(チェンバロ)、多井智紀(チェロ、ヴィオラ ダ ガンバ)
5月17日(日) 14:00開演
近江楽堂 (京王新線初台駅東口隣徒歩5分、東京オペラシティ内3階)

バロックアンサンブル「アニマ コンコルディア」のホームページが生まれました!

バロックヴァイオリン奏者パウル エレラと戸田 薫で結成されたバロックアンサンブルグループ、「アニマ コンコルディア」のホームページが誕生しました。
http://www.animaconcordia.com

パウル製作の弓もホームページでご覧頂けますよ☆

是非お立ち寄りください!

クラシカル弓に使われるペルナンブーコ

ペルナンブーコ材、これはクラシカルの弓から現代の弓まで幅広く使われている木材ですよね。この木も南アメリカ熱帯の地に生息しており、ブラジル産などがよく知られています。

実はこの木、染色によく使われるんです。それも、とっても素敵なパープルの色がでるんです。中世の時代など、階級によって着用してもよい色が決められていたのはご存知ですか?ペルナンブーコから取り出されるこの色はロイヤルパープルといって、イギリスでは王宮貴族だけが使える色だったそうです。今、ペルナンブーコは激減しており、時間をかけて育った質のよいものが貴重になってしまいました。自然破壊で熱帯雨林が急激に衰えていることに加え、染色のために大量に消費してしまうことが原因の一つでもあるようです。

消費するだけであとはほったらかし、ということにならないよう、取った分植林する、という活動を徹底している木材の業者さんもあります。地球からいただいたら返す。皆で心がけて生きていきたいものです。

スネークウッド



バロック弓によく使われるスネークウッド、名前にいわれるようにヘビ柄(私にはどちらかというとヒョウ柄にみえるのですが)の模様があらわれていて、弓はもちろんのこと、実用品でも家具でも高級感がでるので重宝されています(日本では箸とかでもよくみかけます)。はるか南米からやってきたこの材木はバロック時代の家具職人たちにも見初められたようです。



ただ、このヘビ柄、実は時間の経過とともに消えてゆくのです。もっとも姿を消してしまうまでにはかなりの時間を要しますが。そして少しづつ奥ゆかしい色へと変わっていきます。

弓にとっては模様の美しさという点だけで材料に用いられているわけではなく、この木の性質がバロック時代の音楽表現において求められるものにとてもぴったりきているんではないかなというのが私の個人的な印象です。

ちなみにこの木、ヘビ柄で生えているわけではありませんよ。分厚い表皮を剥いだところにでてくるいわば木の芯の部分。ですから家具のための大きな材木をこの木からとるのが可能になるためには、かなり成長した木でなければいけないわけで、しかしこの木の成長はとても時間がかかるため、それだけ稀少になってくるそうです。家具の場合はとくに高級になるわけですよね。

オフィシャルサイト:http:// www.animarhetorica.com/

まずはパウルの弓をご紹介!


それでは簡単にパウル エレラが製作した弓の写真を公開しましょう。




バッハ、ヴィヴァルディ、ヘンデルなどの作曲家たちが生きていた17,18世紀(音楽史ではバロック時代と呼びます)に使われていたヴァイオリンの弓モデルです。現在用いる弓とはちょっと形が違いますよね。材料はスネークウッド。





ヘビ柄のようにまだら模様があるためそう呼ばれています。南アメリカの熱帯雨林などでみられる木です。

手で持つ部分(フロッグといいます)はこのように装飾を施されたものもあり、エレガントです。その当時は象牙を材料によく用いられました。いまとなっては稀少ですから、代わりにマンモスの牙を使ったりもします。

パウルも私も同業のヴァイオリン奏者。オランダに在住していた頃、アムステルダムから家へ向かう車中で偶然乗り合わせた仕事仲間のトランペット奏者(彼も自らトランペットを製作)に弓作りをすすめられ、大乗り気になった私は帰宅早々さめやらぬ興奮のなか、その出来事を彼に話したものでした。彼はそれを「ふーん、そりゃあいいねえ。」と聞く第三者だったはずが・・・。気がついたら、いつのまにか彼が弓をつくっておりました・・・。弓を作るためにはまず道具の友となり、自在に操れる、使いこなせる事(私素人がもっともらしいことを言っておりますが、隣で見ていての感想です)というテクニカルな部分をマスターする必要があります。機械に疎く忍耐がなく、メンテナンスなどにも基本的にズボラな私を、まず道具のほうが慕ってくれるかがまず疑わしい。この場合、この夢を結局彼が実現したというのは実に「天の正しい判断」だったかもしれません。ちなみに、彼は弓をつくる工房まで自分で建ててしまいました・・・。もともと木工DIYとはあまりつながりのない人だと思っていたのですが、人間、気持ちが入るとやってしまうものなのだなあ。

オフィシャルサイト:http://www.animarhetorica.com/