2015年3月26日木曜日

違う目で見てみる

先日コンサートでご一緒した演奏家が、高校生時代まで蝶の採集をしていたんだ、というお話をしていました。

「今思えば、殺して標本にするんだから、残酷なことしてたよなー」

という彼に、何がそんなに魅力だったのか尋ねると、やはり「美しさ」だったと。

以前観た「天国の青い蝶」という映画、
世界で一番美しい蝶といわれているブルーモルフォを
死ぬ前に見届けようとした子の話なんですが、
蝶の妖艶さが、映画に超常的な印象を加えていたのをよく覚えています。



フランソワ・ジェラール『クピドとプシュケ』1798年
ルーブル美術館


この絵も、やっぱり蝶が何とも言えない印象付けをしていますよね。
どうしても、蝶に目がいってしまう。


この絵のお話は、クピド(キューピッド)がプシュケという少女に恋をしたお話。
(ギリシャ神話らしい、紆余曲折がありますので、詳しい話を知りたい方は、
↓こちらのブログで書いてくださった物がとても分かりやすいです。)
http://sanmarie.me/eros_psyche/

プシュケというのは、
ギリシャ語では「息」とか「魂」とかという意味で、このお話、


魂(プシュケ)は愛(キューピッド)をもとめる
という主題で流行っていたんですって。

じゃあ、そこに蝶とは・・・?

って、の象徴だったそうです。

プシュケ(人間)とキューピッド(神)の恋物語なんですが、
プシュケはキューピッドとの愛のために
様々な苦をのりこえて、
最後神体を授かるそうなんですが、
その時に、蝶の羽が生えたそうです。
幼虫からさなぎになって、成虫になる、という、
成長の段階が象徴となって、
プシュケの話と重なったのでしょう。

ちなみに、めでたく結ばれたプシュケとクピドは
「悦び」という名の女の子を授かるそうです。

魂+愛=悦び

いい図式ですね〜❤


イエスと蝶も一緒に描かれることがあるそうです。
幼虫(生)– さなぎ(死)– 成虫(復活)
ということだそうです。



そんなことを知ると、
「ほお〜」

っと思って楽しいですね。
(もっといろいろ知りたい方にオススメ本↓)

モチーフで読む美術史 (ちくま文庫)





でも、たとえばそれを知らなくても、
やっぱりこの絵を観た時、
蝶のモチーフがなんとなく心に残りますよね。

この蝶があることで、
全体の雰囲気の中に
色っぽい豊かさが増しているのは明らか。


だから、たとえ知らなくても、
感じている自分はいる、ということ。

知ってても知らなくてもいい。
感受している自分を探すこと、
なのかもしれません。

音楽でも、物語を音で描写している作品がたくさんありますよね。

どのくらい伝わるんだろう?
ということがすごく知りたい私は、
作品の名前だけ伝えるにとどめて、

(例えば、ビーバー作曲ロザリオのソナタより「受胎告知」https://youtu.be/sIl4SNjHiyI
良かったら想像力、試してみてください・・。)

「この情景読めます?」

と聴く方がたに尋ねたりしたこともあるのですが、
それぞれに物語が浮かぶようです。

「じゃあ、物語が設定されていない曲はどうなるの・・・?」


ということになるんですが、
その物語を、聴きながら自分で創る、
というのが、これまた楽しい鑑賞になるんですよねー。

観る、聴く・・
感受する側も一緒に創造できるのが
芸術なんですね。