2015年4月16日木曜日

琴線に触れる

今日は、首を長くして待っていたヴァイオリンの弦がイタリアからはるばる到着。




私たちが使用しているのは、ガット弦。
テニスで使うあのガットです。

羊の腸や牛の腸を頂戴して作ります。
羊の方が音色が繊細で良い、という論もありますが、
上の写真のものは牛。
このメーカーさんの弦のキャラクターが気に入っているので、
特に動物には今のところこだわっていません笑。

実は私も一度弦の製造を習ったことがあるんです・・・
さあ、自分で作るぞー!っと意気込んで腸を購入したところまでいったのですが・・
(今は狂牛病流行以来、生腸は譲ってもらえないということで、ソーセージ用の腸をとりあえずゲット)
機械に弱い私、弦製作の大道具たちの製作と
水びたしにできるスペース確保という、
一番最初の最初のステップでつまずいたまま、
結局冷蔵庫の中で、ハンパない量の腸の塩漬けが・・・

ソーセージの店、いずれ開店するのかって・・笑。

そんなわけで、今日のテーマは琴線♡

琴線に触れるって素敵な表現ですよね。

琴の弦って、ちょっと触れただけでも音がしますよね。
そよ風でさえつま弾けるというのか、
13本の弦がお互いに共鳴し合うので、
その響きを聴くだけでも癒されます。

ちょっとした事象にも共鳴するということを、感動しやすい心に例えた表現、
どなたが最初に表したフレーズなのか知らないのですが、
日々の生活の中で

「いやあ、今日は私、心の琴線に触れられてしまったわぁ〜」

なんてつい言ってしまうような、
感受性の豊かな過ごし方が出来たらいい感じですねぇ・・・♡

そんなわけで、今日は、私、かおりの心の琴線を触れずにはいられなかった
ヴァイオリニストを紹介します〜。

ちょっと前に、
イギリスをテーマにしたコンサートに参加させていただいたことがあります。
バロック時代のイギリス人たちが楽しみにしていたのが観劇
そのために書かれた音楽を集めたプログラムだったんです。

その頃のイギリスでは、とりわけお金持ちが観劇を愉しんだ、というわけではなく、
結構巷で劇を見ることでき、みんなの楽しみだった様です。

なので、劇の合間合間に、その頃流行っていたチューン(唄)を演奏したらしいのです。
例えば、皆さんご存知のグリーンスリーブズとかも入ってるんです。

そんなわけで、かなりフィドルを思わせるチューンということで、
ずっとアイリッシュ音楽をリサーチしていて結構ハマったんですが

そのとき見つけたのがこのフィドラー。マーティン・ヘイズです。

ひとまずじーっくり聴いてください・・



いやあ、これこそ、「心の琴線に触れた」と表現するのがピッタリの経験。
心にそのまま入ってくる、というのか。
ただただ、聴き入ってしまうというのか。


でも、面白いんですよ、
彼、さらっと言うんです。

「僕は、音楽を悪用していた時期があるんだ。20代の頃かな。
ただお金を稼ぐ為だけに弾いていた。実際、その頃は
『音楽が感情を表現できる』ってこと、全く信じてなかったんだと思う。」

逆にこの正直さがたまらない笑。

音楽に真摯に向き合ってきた人だからこそ、
さらっと言えてしまうんだと思うけれど・・・

彼をずっと遡ったバロック時代のイギリスに話をズーンととばしますと、
イギリスで活躍していたジェミニアーニというヴァイオリニストがいるんです。
(彼もチューンを感じる作品いっぱい残してます)

コレッリの弟子で、「ヴァイオリン演奏の芸術」みたいなタイトルで教本を残していて、
バロックヴァイオリンを始める時に誰もが学ぶ本なんです。
その序文にですね、

---音楽の意図というのは、耳を心地よくさせることだけではなくて、感情を表現し、人々の創造力を引き出し、心に作用し、熱情をよみがえらせること。
ヴァイオリン演奏にある芸術というのは、
「人の声」(完成なる美)という音色を
この楽器に与えること----


といったような意味合いのことが書かれているんですが
(教本にしてはロマンチックな序文♡こーんな時代だったんですねー)

マーティンのヴァイオリンの音色は
そんな”肉声を感じる何か”があるように思います。