2012年11月7日水曜日

木の性格と、音の表現

バロック弓で主に使われる材料はスネークウッド。クラシカル弓でもスネークウッド製のものは最近よく見かける(そして良い弓もたくさんある)が、ペルナンブーコ材の性格がモーツァルトなどの語法でよい力を発揮するような気がする。 スネークウッドは硬い木だ。反面、予測不能に「パキっ!」と真っ二つになったりして(注:弓になってからは、落としたりしない限りさすがに割れたりはしないですよ、苦笑)「竹を割ったような」性格も持っている。弓としての反応を言えば、どっしりと密度の濃い重さと安定感があって、非常に明確に「スピーチ」してくれる材質だ。ペルナンブーコはというと、スネークウッドに比べるとカステラみたい。なんとも言えない軽快さと、そしてしなやかさがある。ハイドンのユーモアや、モーツァルトの屈託の無い柔らかさ、これらにうまく反応してくれる感じだ。材木の種類で全てが解決するわけではもちろん無い。一本の木を弓という姿に移し替える際に、その材木の特性・特徴を読んでそこからうまく弓を象ることができれば、必ずそれなりの機能を持ち合わせたものが生まれるし、それが製作過程の魔法でもあるのだが、木の性格と音の性格がリンクする、という瞬間も間違いなくある。そんなとき、「音楽って自然と人間のアートだな」とうれしくなる。